わが国が専守防衛の原則の中で、相手国の国民の安全を脅かす可能性をどのように極小化するかも論点になるでしょう。
独立機関は必要だが、機能させるのは難しい
法案が成立すれば、政府が必要な通信情報を入手し、警察および自衛隊がアクティブサイバーディフェンスを行うことができます。
これまでの情報通信政策や安全保障政策の枠を超えた措置を実行する以上、政府から独立した機関のチェックは欠かせません。
しかし、この独立機関を機能させるのは簡単ではありません。
原則、事前承認とされていますが、通信情報を入手するのかを一々個別にお伺いを立てることが現実的とは思えません。どの程度の包括的な承認を認めるのかも難しい問題です。
また、他国からサイバー攻撃をまさに受けんとしている時に、アクティブサイバーディフェンスの許可を得る暇があるとも思えません。例外的に事後承認とされていますが、どのように運用するのかも課題です。
独立性の高い三条委員会が一旦設立されると、政府はその決定に介入することはできません。
肝は人選です。現実の安全保障と人権や憲法の原則をどのように両立させるのか。そうした高度な判断をできる人物とは誰なのか。極めて難しい判断になります。
国会の関与も必要だが…
問題の重要性を考えると、国権の最高機関たる国会の関与も必要になります。
昨年末、国民民主党の玉木雄一郎代表は政府与党に能動的サイバー防衛法案の早期提出を促しました。
日本維新の会も必要性については理解しているのではないかと思いますが、立憲民主党の賛同を得られるかは不透明ですし、れいわ新選組、共産党は難しそうです。
野党の中で国民民主党の賛同が得られれば法案を成立させることはできそうですが、安全保障の根幹にかかわる政策について大きく態度が分かれているのが今の国会なのです。
サイバー防衛のオペレーションについて、国権の最高機関たる国会の関与は必要ですが、やり方を間違うと安全保障の根幹を揺るがすことになる難しさがあります。