厚生労働省(厚労省)が発表する新卒入社後3年以内の離職率の推移を見ると、直近10年は大企業(従業員1000人以上の事業所)では上昇傾向であることがわかります。

「一般的には、大企業のほうが給料がよい傾向にあるので、給料が問題であれば、大企業の3年以内離職率が、中小企業より上昇傾向にあるのは違和感があります。人間関係についても同様です。従業員が少ない中小企業のほうが、人間関係は密になりがちですし、イヤだと思ったときに異動願いを出すこともできません」(著者)

「結局、理由は何なのでしょうか? 今までインタビューを重ね、様々な企業の若手社員や人事の方々と対話する中で、若手社員が辞める理由として、①存在承認の不足、②貢献実感の不足、③成長予感の不足の3つがあることがわかりました」(同)

ミスマッチは幻想である

じつは、筆者も本書のテーマに関心があり調査をしたことがあります。

「採用のミスマッチ」という言葉を聞いたことがあるでしょう。採用する企業と学生との間に認識のズレがあり、入社後にギャップが生じて、新卒社員が早期に離職してしまうことを指します。このミスマッチが生まれる理由は、おもに2つあると考えられます。

厳選採用への移行の失敗 大学進学率の高まりと学生の質の低下

厚生労働省の「新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」では、現在までの離職率データを確認できます。

ミスマッチは、昭和40年代の高度経済成長時代から社会問題として取り上げられていました。ところが、当時の数値と現在の数値にそれほどの乖離は見られません。また、G7各国の状況と比較して日本が高いわけではありません。

離職率が高くないということは、日本のミスマッチの基準が間違っているということです。ミスマッチがクローズアップされることに意味はないのです。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

2年振りに22冊目の本を出版しました。