水族館の善意頼みの限界

 それにしても気になるのは犯行の動機だ。搾取した寄託管理費が19年間で計約189万円だから金銭目的には見えない。各報道によると、飼育スペースの確保が難しくなったことが動機というが、飼育スペースの確保には調整措置が取られている。

 飼育を受託して以降、個体の成長や繁殖で飼育スペースに余裕がなくなった場合、個体は飼育している園館の所有なので、JAZAに相談したうえで他の園館に移動できる。その報告はJAZAがワシントン室に提出する。この規定に従って元館長らは飼育スペースを調整すればよさそうなものだが、毎日新聞(1月23日付)によると「水族館の飼育管理能力が疑われると考えて、帳尻あわせをしていた」という。

 Business Journal編集部は、事件の背景・飼育管理体制・再発防止策について、サンシャイン水族館を運営するサンシャインシティ(東京都豊島区)に取材を申し込んだが、「捜査中のため取材に応じられません」(広報担当)という返答だった。

 一方、押収された動物の寄託管理には、飼育スペースとは別の問題が新たに浮上している。物価上昇による飼育コスト上昇で、JAZA事務局はこう指摘する。

「管理費は、人件費、水道光熱費、その他諸々の経費は計上されておりません。単純に餌代だけです。その餌代も現状とはかなり乖離(かいり)していて物価上昇に連動していません。相当前に決めた金額がそのまま適用されています。そのため、コストパフォーマンスに見合う水準ではないと考えています。善意で引き受けているというのが実態かと思います」

 世間一般にはほとんど知られていないが、国の予算見直しが必要な分野がここにもある。

(文=Business Journal編集部)

提供元・Business Journal

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