1月23日、何とも残念で情けない事件が、全国紙各紙と民放各局でいっせいに報道された。サンシャイン水族館(東京都豊島区)の元館長と現役副館長など4人が、経済産業省に飼育を委託された絶滅危惧種「ビルマホシガメ」の飼育数を虚偽報告し、寄託管理費を搾取した詐欺容疑で東京地検に書類送検された。毎日新聞は次のように報じている。
<警視庁によると、水族館は1999~2003年に、密輸入されたビルマホシガメ計23匹の飼育を経産省から委託された。徐々に飼育スペースの確保が難しくなり、当時の職員が愛好家に計10匹を譲り渡したが、委託された数のままで報告を続けていた。02年度からの19年間で、計約189万円の管理費を不正に得ていたとみられる>
なぜ寄託管理費の搾取が発覚したのか。譲り渡した相手が沖縄在住の元サンシャイン水族館の女性職員で、知人にビルマホシガメを販売して「種の保存法」違反容疑で夫とともに逮捕されたことから発覚したのである(2人とも元館長らと起訴)。
税関で押収された動物の取り扱い
そもそも税関で押収された動物は、どのような仕組みで取り扱われるのだろうか。まず税関から経済産業省貿易経済安全保障局・貿易管理部・野生動植物貿易審査室(略称ワシントン室)を通じて、日本動物園水族館協会(JAZA・東京都台東区)に押収保護の連絡が行き、ワシントン室からJAZAに収容施設の捜索依頼が入る。「税関からは、動物の鑑定依頼はありますが、保護収容に関してはワシントン室が窓口となります」(JAZA事務局)。
JAZAは希少動物の繁殖を図るため、動物ごとに類別事業調整者や種別計画管理者などの責任者を決めており、その者が中心に繁殖計画を進めている。例えば霊長類事業調整者はチンパンジーやゴリラ、オランウータンなど霊長類全般を担当し、チンパンジー計画管理者はチンパンジー飼育園館のすべての情報を把握している。このような担当者が各地の動物園に在籍している。カメの場合は、両生爬虫類事業調整者に相談し、リクガメの計画管理者らに相談しながら受け入れ先を探していく。
だが受け入れ候補となった施設に依頼した際、スムーズに受け入れが決まるのか。あるいは飼育スペースなどの理由で拒否が相次ぎ、受け入れ先の確保に右往左往するケースも発生するのだろうか。
「もともと園には、それぞれの展示収集計画があるので、突然保護収容を頼まれても受け入れが難しい場合がほとんどです。保護収容のためのスペースも、あらかじめ用意しているわけではありませんし、スペースがあれば自園の動物たちに使いたいわけです。そこを何とか収容してもらっています」(同)
受け入れ先施設に支払われる寄託管理費は「1日1頭〇〇円」という単価に飼育数をかけて算出する。寄託管理契約は1年単位で、上限は設定されていない。飼育状況の管理監督は、JAZAが半期ごとに状況調査を行い、死亡・繁殖・移動なども委託施設からの報告で把握し、調査結果をワシントン室に報告している。ただ、状況調査は「協会会員としての信頼関係に基づくものです。実査とか監査とか現地に赴くことはありません」(同)という。今回の事件では、じつに19年もの間、寄託管理費を搾取し続けた。おそらく実査や監査が実施されないことを逆手にとったのだろう。かりに元職員が知人にビルマホシガメを販売しなければ発覚したかどうか――。
事件を受けて、JAZAは「改めて管理に不備はないかを注意喚起することと、実査のようなことも必要かと考え、今後ワシントン室と協議し、確認方法の改善を図っていきたい」と方針を示す。