たとえば、キープの重力がCMBを通り抜けると、わずかな温度の変化(統合サックス・ウルフ効果)が生じる現象が起こります。
こうした温度変化は、宇宙の膨張速度やダークエネルギーの性質を調べる上で、とても重要な手がかりになる可能性があります。
さらに、キープは、銀河や銀河団の動き、いわゆる「ストリーミング運動(局所的な重力の影響で一方向にまとまって動く現象)」にも影響を与えています。
銀河は宇宙の膨張によって遠ざかっていますが、キープのような巨大な構造の重力がその動きに微妙なずれを生むため、宇宙の膨張速度を示すハッブル定数の測定にも影響を与えていると考えられます。
そしてキープの存在は宇宙の膨張率にかかわるハッブル定数にも影響を与える可能性を秘めています。
つまりキープの発見は、私たちが宇宙を「均一」と考える従来の見方に新たな視点を与えるとともに、宇宙の進化、ダークエネルギーやダークマターの影響、さらには宇宙背景放射を通じた初期宇宙の状態にまで、幅広い影響を及ぼす可能性があるわけです。
今後、さらに詳細な観測やシミュレーションが進むことで、こうした巨大構造が宇宙論全体にどのような意味を持つのかが、より明確になっていくことでしょう。
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元論文
Unveiling the largest structures in the nearby Universe: Discovery of the Quipu superstructure
https://doi.org/10.48550/arXiv.2501.19236
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。