レバノンの親政府発足について、国連レバノン担当特使のジャニーン・ヘニス・プラスシャールト氏は「今日の政府樹立はレバノンにとって新たな明るい省の到来を告げるものだ」と歓迎している。
レバノンの国民経済と財政危機は深刻だ。国際通貨基金(IMF)によると、「レバノンでは4年近くにわたる経済破綻により、自国通貨の価値の約98%を失い、国内総生産(GDP)は40%縮小し、インフレ率は3桁に達し、中央銀行の外貨準備の3分の2が流出した」という(アラブニュース2023年6月30日)。
新型コロナウイルスの感染拡大、ベイルート湾大爆発事故(2020年8月4日)、金融危機と立て続きに試練に直面したレバノンでは、国民の生活状態は悪化し、政府の無能と腐敗に抗議する大規模デモが一時起きたが、ポスト・コロナに入り、国民の間では政府に抗議して立ち上がるといった動きはなかった。そのような中、パレスチナ自治区ガザを支配してきたイスラム過激派テロ組織「ハマス」が2023年10月7日、イスラエルを奇襲テロした後、レバノンのヒズボラがハマスに連携してイスラエルに攻撃を再開し、レバノンの政治・経済情勢は一層悪化してきた。
なお、イスラエル軍とヒズボラの間で11月27日以来、停戦が続いている。イスラエル軍は当初、60日以内に南レバノンから段階的に撤退することになっていたが、軍の撤退期日は2月18日まで延長された。一方、ヒズボラは、リタニ川を越えた国境地域から撤退し、軍事基地を撤去しなければならない。その後は、レバノン軍と国連レバノン平和維持ミッション(UNIFIL)が停戦を監視することになっている。
しかし、イスラエル軍はレバノン南部に依然留まり、ヒズボラを攻撃している。イスラエル軍によると、ヒズボラは停戦協定に違反して武器を保管していたという。イスラエルとヒズボラ間の停戦合意の完全履行にはまだ時間がかかりそうだ。