人類は何千年も前から「永遠の命」を追い求めてきました。
古代中国、秦の始皇帝(BC259〜BC210)もその一人です。
彼は無数の使者たちを中国全土に遣わせ、不老不死の霊薬を探しました。
そうして最終的にたどり着いたのが「水銀」です。
「…水銀?いや、ヤバくない?」
そう思った方がほとんどでしょう。
その通り、水銀は臓器や神経系を破壊する強い毒性を持ち、日本では「水俣病」を引き起こしたことでも知られる劇物です。
しかし始皇帝は「水銀を飲めば永遠の命が得られる」と信じ続けました。
果たして、その結果はどうなったのか…?
目次
- 不老不死の霊薬を求めて
- 水銀入りの丸薬を飲み続けた結果…
不老不死の霊薬を求めて
水銀は古代から知られていた金属であり、少なくとも紀元前3000年頃にはメソポタミアやエジプトで使われていた証拠があります。
人類は水銀を神秘的な物質として見ていました。
水銀はラテン語で「ヒュドラルギュルム(hydrargyrum)」という名前が付いています。
これは「水(hydr)」と「銀(rargyrum)」を組み合わせた言葉で、水銀の驚くべき特性をよく表しています。
というのも水銀は超高温でなければ溶けない他の金属と違い、常温で液体になる唯一の金属だからです。
(ガリウムのように少し温めれば液体になるものも見つかっているが、常温で液体になるのは水銀のみとされる)
となれば、人々が水銀のうちに神秘的な力を見出したとしても不思議ではありません。
そうして始皇帝は水銀に「不老不死の力が宿っている」と信じ込んだのです。
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始皇帝を中国全土を統一した初の君主であり、自らを「天命を受けた神聖な存在」と考え、不老不死を手にすることで「永遠に統治する」ことを望んでいました。
しかし実のところを言うと、彼は極端なまでに死に対する恐怖を抱いていたのです。