しかし、嚥下障害のある人にとって本当に安全で飲み込みやすいとろみの科学的な基準は、これまで十分に研究されていませんでした。
この課題に挑んだのが、今回の北海道大学の研究です。
最新技術でお粥の「とろみ」の分析!粘度の比較が可能に
北海道大学の研究チームは、「流速分布計測支援型レオメトリ(VPAR)」という最新技術を用いて、お粥の流動特性を詳細に解析しました。
VPARは、二重円筒の装置を使って食品の流れ方を測定する技術です。
外側の円筒を回転させることで、サンプル(お粥)に変形させ、その際に超音波を使って円筒内の速度分布を測定するのです。
このデータを流体力学の計算式に当てはめるなら、お粥の粘度(とろみの強さ)を正確に求めることができます。
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研究では、市販の白粥、玉子粥、小豆粥の流動特性を比較しました。
そして結果は以下の通りでした。
- 白粥の粘度が最も高く、流れにくい(しっかりしたとろみがある)
- 小豆粥は白粥より少し粘度が低い
- 玉子粥の粘度は最も低く、さらっと流れやすい
さらに、すべてのお粥が「シェアシニング性」を持つことが明らかになりました。
シェアシニング性とは、かき混ぜたり力が加わると粘度が低下する性質のことで、おかゆだけでなく、ヨーグルトやとろみ付き飲料もこの性質を有しています。
シェアシニング性は嚥下食にとって優れた性質だと言えます。
口の中で食べ物を動かすときは適度に柔らかくなり、飲み込む際には適切なとろみを保つため、誤嚥を防ぎながらスムーズに嚥下できるのです。
では、この「お粥の科学」は、どのように役立っていくでしょうか。
お粥の科学が、より「安全で楽しい食事」をつくる
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日本では高齢化が進むにつれて、嚥下障害を抱える人の数が増加しています。