風邪をひいたときや胃腸が弱っているとき、優しく体を温めてくれるのが「お粥」です。
昔から体調がすぐれないときの定番食として親しまれてきたお粥ですが、実は介護や医療現場でも重要な役割を担っています。
高齢者や病気で嚥下(えんげ)機能が低下した人にとって、お粥は誤嚥(ごえん)を防ぐための重要な食事なのです。
しかし、すべてのお粥が安全というわけではありません。
とろみの加減を間違えると、かえって飲み込みにくくなることもあります。
では、「ちょうどよいとろみ」とはどのようなものなのでしょうか?
この課題に取り組むため、北海道大学大学院工学研究院の大家広平氏ら研究チームが最新の計測技術を駆使し、お粥の流動特性を科学的に解析しました。
この研究成果は、2025年2月3日付で『Journal of Rheology』に掲載されました。
目次
- 嚥下障害と「とろみ」の関係
- 最新技術でお粥の「とろみ」の分析!粘度の比較が可能に
- お粥の科学が、より「安全で楽しい食事」をつくる
嚥下障害と「とろみ」の関係
私たちは、普段何気なく食べ物を飲み込んでいますが、その過程は非常に複雑です。
食べ物は口の中で噛み砕かれ、舌を使って喉へ送り込まれます。
その後、気管と食道の分岐点にある「喉頭蓋(こうとうがい)」が閉じることで、食べ物が気管に入るのを防ぎます。
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しかし、加齢や病気によってこの機能が低下すると、誤って気管に食べ物が入り、誤嚥を引き起こします。
特に液体は速く流れ込むため、気管に入るリスクが高くなります。
そこで役立つのが「とろみ」です。
とろみをつけることで、液体の流れをゆっくりにし、喉の筋肉が飲み込むタイミングを合わせやすくなります。
ただし、とろみが強すぎると逆に飲み込みにくくなるため、適切な粘度が求められます。
これまで、介護の現場では「経験則」に頼って食事のとろみを調整していました。