「誰が糸を引いているのか?」
突然投げかけられるこの意味深なフレーズは、なんと米軍の新兵募集ビデオの一節なのだ――。
■映画の予告編のような謎の「新兵募集ビデオ」
日本の街中でよく見かける「自衛官募集」のポスターだが、当然だが米軍もさまざまな手法で新兵を募集している。
昨今のSNS時代を反映して動画として投稿するための募集ビデオも多く制作されているのだが、その中の1つの不気味な募集ビデオが話題を集め、議論を招いているようだ。
米陸軍にはベトナム戦争の時代から心理作戦(PSYOP)の専門部隊が存在しているのだが、現在の中心的な心理作戦部隊はノースカロライナ州フォートブラッグを拠点にしている「第4心理作戦対応部隊 (4th Psychological Operations Group)」である。同部隊が最近公開した募集ビデオが注目を集め、ある種の物議を醸している。
「Ghosts in the Machine」というタイトルのこの動画は、まるで映画の予告編のようなビジュアルで「全世界が舞台です。参加しませんか」と興味を持つ若者を勧誘している。
軍隊の新兵募集ビデオやポスターなどというものは“体育会系”のノリなのではないかという先入観を抱いてしまうかもしれないが、このビデオは“体育会系”っぽさは微塵も感じられない。ある種哲学的かつ文学的なタッチの意外すぎる映像が繰り広げられるのだ。
孫子の『兵法』から引用した箴言から始まる映像は、古いアニメ風のピエロの脱力もののダンスシーンに続き、無人のベルリンの街や地下鉄の光景が繰り広げられる。そして「誰が糸を引いているのか?」というフレーズが画面にあらわれるのだ。
「槍の先端、その影に私たちがいます。私たちが触れるものはすべて武器です。私たちは欺き、説得し、変化させ、影響を与え、刺激することができます。私たちはさまざまな姿でやって来ます。私たちはどこにでもいます」(ビデオより)
自分たちを「影響力の達人」と呼ぶ第4心理作戦対応部隊にとって、この動画の反響こそがその実力の証明ということになるのだろうか。
「私たちは、心理的な脆弱性を標的とし、敵対する組織に亀裂、混乱、疑いを生じさせる、または強めるために影響力のある活動を行っています」と同部隊は言及している。
「私たちは、敏感でハイテクなものから、ローテクなものやノーテクなもの、そして明白なものから秘密で欺瞞的なものまで、あらゆる利用可能な手段を使用しています」(同ウェブサイトより)
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