ただし、塗膜の剥がれや汚れがたまると、イオンが十分に放出されにくくなるため効果が落ちる可能性があります。
また、極端に使いすぎることで耐性を持つ菌が出現するリスクも指摘されているので、定期的なメンテナンスや使用上の注意が必要です。
光でウイルスや菌を分解するという仕組み

銀や銅に加えて、近年は光触媒を利用した抗菌技術も注目されています。
代表的な例は酸化チタンです。
酸化チタンなどに光が当たると強力な活性酸素種(酸化力が強く、細胞構造を破壊しやすい酸素分子)を生成し、銅イオンと同様に菌やウイルスの外膜・タンパク質を壊します。
一般的には紫外光が必要と言われてきましたが、最近は銅や銀をドーピングした素材が登場し、室内のわずかな可視光でも十分効果を発揮するコーティング剤が開発されています。
新型コロナウイルスを光触媒コーティングしたガラス上に付着させ、暗所や蛍光灯照明下で24時間放置したところ、99%以上の不活化が確認されたというデータがあります。
まさに光の力でウイルスを無力化するというキャッチーなフレーズが現実になりつつあります。
しかし、どんな技術も完璧ではありません。
光が届かない場所や汚れが厚く付着した表面では、活性酸素が十分に生成されず、効果が低下する可能性があります。
さらに、コーティングが剥がれると、そもそも光触媒が働ける状態ではなくなります。
結局のところ、定期的な清掃や適切な貼り替えが必要で、そこを怠ると効果半減というわけです。

銀・銅や光触媒など、見えない敵を抑え込む技術は従来から数多く開発・検証されてきました。
実験によって得られるデータは、私たちが実感しにくい抗菌効果を裏づける重要な根拠となります。
同時に、どの技術にも定期的な清掃やメンテナンスなどの課題があり、完全無欠というわけではありません。