実験では、ウサギに対して次の2種類の餌を与えました。
- 標準的なカルシウム補助剤を含む餌
- 粉砕したウサギの歯を含む餌
その後、ウサギの糞を分析し、どの程度のカルシウムが体内に吸収されたかを測定しました。
結果として、歯の粉末を含む餌を食べたウサギは、摂取したカルシウムの33%を消化・吸収していたのに対し、標準的なカルシウム補助剤を摂取したウサギはわずか20%しか吸収できていませんでした。
この結果は、ウサギが咀嚼の度に生じる歯の粉末を摂取することで、より効率的にカルシウムを取り込める可能性を示しています。
しかも、これによりカルシウムの過剰摂取による健康リスクを低減できるとも考えられています。
ウサギは歯を食べて歯を生やしている可能性
この研究によると、ウサギの歯の摩耗によって生じた微細な粉末は、そのまま飲み込まれ、消化管を通じて再び吸収されている可能性があります。
つまり、ウサギの体内では「自分の歯を食べることで歯を成長させる」というリサイクルシステムが働いていると考えられるのです。
これまで、ウサギのカルシウム摂取については、主に食事からの供給が前提とされていました。
しかし今回の研究によって、ウサギは自らの歯を再利用することで、効率的にカルシウムを補給している可能性が示されました。
さらに、この知見はペットウサギの飼育方法にも影響を与えると思われます。
ペットのウサギにはカルシウムを多く含む餌が与えられることが一般的ですが、それが本当に必要なのか、改めて検討する必要があるかもしれません。
そもそもウサギがすり減った歯の粉末を食べているのだとしたら、追加でカルシウムを与える必要はないかもしれないのです。
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ウサギが自らの歯を食べることでカルシウムを補給しているという発見は、まさに自然が生み出した驚異の仕組みです。
この研究はまだ初期段階であり、今後さらに詳細な調査が必要とされていますが、ウサギの生理学や栄養学に関する理解を深めるうえで重要な一歩となるでしょう。