政策的に大きな論点となるのは、「自由民主主義の勝利」=「ディープ・ステート」の思想にもとづいた行動の評価である。

NEDは、そもそもその存在意義が、世界各国における(アメリカ流の)民主主義の普及の促進だ。USAIDも、「民主化支援」を重視している点で、他国の開発援助機関と比べても、際立った特徴を持つ。開発援助をする際に「内政干渉」の疑いを持たれることを警戒するのであれば、「民主化支援」は、重視されないだろう。「民主化支援」は、その性格上、「内政干渉」と言われても仕方がない性格を持たざるを得ないからだ。

NEDやUSAIDは、「内政干渉」の批判に応じず、断固として「民主化支援」をするアメリカ外交の象徴とも言ってよい存在である。

特に「民主主義諸国 vs. 権威主義諸国」の世界観を掲げ、その二項対立の世界の中で、アメリカが主導する「民主主義陣営」が勝利する、という政策目標を推進していたバイデン政権では、NEDやUSAIDは、重要な役割を担っていた。かなりわかりやすく、敵対勢力からは「ディープ・ステート」と非難される「民主化支援」の一大勢力を形成していたのである。

バイデン政権期にUSAIDの長官を務めていたサマンサ・パワー氏は、民主党タカ派の最右翼と言って良い存在である。オバマ政権時に、やはり国際介入主義のタカ派の急先鋒であったスーザン・ライス氏を継いで国連大使を務めた際には、アメリカの国際介入タカ派の立場を象徴する人物として知られていた。

パワー氏が長官を務めていたUSAIDが、世界に(アメリカ流の)民主主義を輸出するために奔走する組織でなくなるはずはなかった。むしろかなりあからさまに「民主化支援」重視の方向に舵が切られていた。

アメリカ国内の「反トランプ」勢力までUSAIDが支援していたというので、トランプ政権発足直後の「粛清」対象に、USAIDが選ばれてしまった。しかしこれも「民主主義vs権威主義」の世界観の中で、「バイデン政権=民主主義、トランプ氏=権威主義」という二元論もあてはめてしまい、アメリカ合衆国の「民主化支援」をしていたということである。