こうして作り上げた37次元の光状態を使ってGHZパラドックスを検証した結果、「古典物理なら絶対起こらないはずの事象」をはっきりと観測し、その量子ゆえの異常性を確かめることができました。

この結果は、光の本質のようなものが私たちが認識できる古典的な世界の次元(自由度)よりも遥かに多くの次元(自由度)にまたがって存在していることを示唆しています。

(※ここで言う次元は抽象的な空間の追加の軸のようなものだと思ってください)

言い換えれば、量子力学が“三次元空間を超える高次元の状態”を必要とする、という事実は「古典的には見えない自由度がたくさん隠されている」ということを意味します。

私たちが普段暮らしている世界は縦・横・高さの3次元で十分だと感じますが、量子のレベルでは「さらに多くの座標軸」が必要になるわけです。

これにより、量子現象が古典的直感ではありえないような結果を生む理由が少し見えてきます。

この事実は、私たちの物理観を拡張し、「なぜ量子力学がこんなにも不思議な振る舞いをするのか」という根源的な問いに迫る上で大きな一歩となります。

こうした高次元量子状態を実現できる技術は、単なるパラドックス実験の枠にとどまりません。

将来的には、量子コンピュータの情報処理を劇的に拡張する可能性があると期待されています。

たとえば、1つの光子に37次元相当の情報を詰め込めれば、従来の2次元(キュービット)の何倍もの情報量を扱えるからです。

これらの成果は、量子の隠された多次元世界の扉を開く鍵となり、未来の情報処理技術や物理学のパラダイムシフトを引き起こす礎となることでしょう。

全ての画像を見る

元論文

Exploring the boundary of quantum correlations with a time-domain optical processor
https://doi.org/10.1126/sciadv.abd8080