言い換えれば、私たちが認識できる古典的な世界と、量子力学の不思議な世界の違いを現わすための言葉と言えるでしょう。
ですが、このGHZパラドックスの「非古典性」をどこまで際立たせられるのでしょうか?
さらに、パラドックスをより強力に示すには、どのような条件が必要なのでしょうか?
この素朴な疑問を解明するためデンマーク工科大学の研究者たちは従来より「もっと強烈な量子パラドックス」を起こすことにしました。
(※従来より文脈数(測定基底数)を最小化しつつ最大限に量子の不思議さを顕在化させる試みに挑んだという意味です)
その手段として研究者たちは「実験で使う光子たちを、できるだけ非古典的(量子らしく)振る舞う状態」にすることを目指しました。
こうすることで量子効果と古典理論の食い違いを際立たせることが可能です。
次に、この状態に至った光子の性質を調べることにしました。
最も大きな矛盾を起こす光子の状態を知ることで、古典的な世界から見た量子力学の世界の異質っぷりを理解できると考えたからです。
すると「光子が37次元の状態を持っているとき、GHZパラドックスの不思議さを最大限に引き出せる」ことが計算によって判明します。
ここで言う「光子が37次元に存在」というのは、「状態を表すのに37個の座標が必要」ぐらいにイメージしていただければOKです。
理論が完成すると、次に研究者たちは実際に37次元の光を作り出し、その性質を測定しました。
といっても、実験室に他次元空間への扉を開いたわけではありません。
光のパルスを細かく制御することで、パルスの強度や位相を制御し、結果的に多次元ベクトルのような状態を作り出したのです。
さらに光の干渉を発生させ、ある種の畳み込み演算を実現します。
この操作によって実質的に高次元空間内での投影確率を測定することが可能になります。
やや難しい手順ですが、要は光に細かい操作を加えて、37次元空間にあるかのような状態を作り出したのです。