結果、ラジカル対機構とMagR機構はいずれも量子限界に迫る機能を持っている可能性が示されました。
これらの2つの機構がともに網膜にあると考えられることから、鳥たちは網膜を使って方向を決めていると考えられます。
もし人間に同様の仕組みがあった場合、渡りの季節になると目が特定の方向に向いてしまうような症状が起こるかもしれません。
一方、誘導機構は理論的にみても量子限界から遠く、マグネタイト機構は中間的な位置付けといえます。
研究チームはこれを指して「自然界は私たちの想像以上に巧妙なセンサー設計を行なっている可能性がある」とコメントしています。
今回の分析は主に理論的な手法に基づくものですが、「もし自然界でこうした高感度が実現しているとすれば、どのくらいの分子数・どんな配置が必要か」という具体的な目安を与える点で大きな意味を持ちます。
今後、実際の鳥類や他の動物の体内でこれらのメカニズムがどのように働いているのか、さらなる実験的検証が期待されます。
こうした理解が進めば、将来的には生物がもつ高感度センサーをヒントにした革新的な人工マグネトメーターの開発につながるかもしれません。
科学技術だけでなく、動物の行動や進化の謎にも光を当てる重要なステップとなるでしょう。
全ての画像を見る
元論文
Approaching the Quantum Limit of Energy Resolution in Animal Magnetoreception
https://doi.org/10.1103/PRXLife.3.013004?_gl=1*1lyqyqw*_ga*NDc0MDg5NTkwLjE3MjAzOTI3NTM.*_ga_ZS5V2B2DR1*MTczODcyMDUwNS43Ni4wLjE3Mzg3MjA1MDUuMC4wLjI0MzE2Mjc4Mg..
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。