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3年目の熟成。その内容は多岐にわたる
まもなく登場から3年を迎える現行アウトランダーPHEVの評判は上々。輸入SUVを愛用してきた「クルマにうるさい」ユーザー層からも、三菱車としてかつてないほど目が向けられているという。今回の改良には彼らの声も大いに反映されている。
進化ポイントは多岐にわたる。走りにおいては、大容量化と高出力化を図った新開発の駆動用バッテリーを採用した。これによりEV航続距離が大幅に伸長し、ついに100kmの大台を超えた。バッテリー単体の出力は60%増、システム総出力は20%増となっており、動力性能も大きく向上している。
内外装はあまり変わっていないように見えるが、実は広範囲にわたりリファインされた。
「威風堂堂」をコンセプトに掲げる外観は、フロントがスッキリとし、前後のスキッドプレートが力強い印象になったほか、灯火類の意匠が変わり、ホイールは斬新なデザインになった。新色のムーンストーングレーメタリックというボディカラーが見せる新感覚表現も印象的だ。
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インテリアも装備の充実と質感の向上が図られている。センターモニターのディスプレイサイズが12.3インチに拡大され、コネクティッド機能が強化されたほか、新たにフレームレスのデジタルルームミラーやアルミペダルを採用。室内ランプもLED化するなど、細かいところまで手が加えられた。
目の肥えたユーザーに対応するため、要望の多かったシートベンチレーションや、ヤマハとの共同開発による2種類のダイナミックサウンド・オーディオが設定されたのも今回の注目ポイントである。
従来も良かったが、最新版はすべてが上。実力は欧州プレミアムを上回る
試乗車は最上級グレードのPエグゼクティブパッケージ。乗り込むと、室内が一段と上質な空間と変貌したことを実感した。リフレッシュ機能まで備えたセミアニリンのレザーシートや上級仕様のオーディオなど快適装備はすべて標準。5名乗りで659万4500円、7名乗りでは668万5800円という高価なプライスも、けっして割高には感じない。
サーキットで新旧を乗り比べ、その進化幅が大きいことを理解した。まずは動力性能がパワフルである。明らかにアクセルレスポンスが鋭くなり、加速の力強さを実感できるようになっている。0→100km/h加速はノーマルモードの場合で、これまでの10.2秒から8秒以下へと大幅に短縮されたという。納得だ。
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速さとともに滑らかさも確実に増している。EVらしいシームレスな加速が高速域まで維持されるのが気持ちいい。リファイン幅は驚くほど。スペック以上のプラスαがあるように感じられた。
足回りは、ショックと車体の揺れの低減、そしてしっかり感の向上を目指したという。サーキットを攻めぎみに走ってみると、ハンドリングに一体感があり、上質な乗り味に仕上がっていることを実感した。
筆者は従来の刺激的な走りも好きで、今回の新旧乗り比べでも、とくにターマックモードで面白いように曲がって楽しく走れる実力をあらためて確認した。だが、改良版をドライブして目からウロコが落ちた。刺激的な楽しさのさらに先に広がる領域を見せてもらえたからだ。
新型は、しなやかに路面を捉える感覚と、しっかりとした手応えがあり、持ち前の回頭性を損なうことなく落ち着いた印象を加えていた。より理想に近い走りを実現している。まさしくドライバーがイメージしたとおりに操れる。
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乗り心地もよくなっている。従来型は20インチタイヤを履くことで見映えがよかった半面、ややキャパシティオーバーな印象があり、乗り心地に硬さが感じられた。最新版をサーキットで走らせた限りでは、バネ下の重さ感は軽減され、縁石やや継ぎ目を通過したときの入力の受け止め方も巧みになっていた。おそらく公道を走っても、サーキットで感じたよさが味わえるだろう。
開発者は「電動車ならではの走りを、さまざまな天候や路面で、より安全に安心して楽しめる」ことを意識したという。確かにこの完成度なら、条件が悪くなるほどありがたみを実感できそうだ。
価格は上昇しているが、関係者によると、「最近よくある原材料費などの高騰を受けての値上げというよりも、いろいろ新しいものを取り入れたことによる側面が大きい」のだという。実際にも金額の上がり幅以上にクルマの完成度はもっと上がっているように感じられ、なるほど!の連続だった。アウトランダーPHEVは確実に魅力度が増している。