顔の表情は「神が与えた言語」
デュシェンヌは、表情の仕組みは単なる生理現象ではなく、神が人間に与えた「普遍的な言語」であると考えていた。彼は次のように記している。
「人の顔において、創造主は機械的な必要性を超えた存在であった。神はその英知によって、あるいは(この表現を許していただきたいが)神の遊び心によって、特定の筋肉を単独で、あるいはいくつかを同時に動かし、最も一瞬の感情ですら瞬時に顔に刻むことを可能にした。そして、この表情の言語が創造された後、すべての人間が本能的に同じ筋肉を収縮させることで感情を表現する能力を授かった。このことにより、この言語は普遍的かつ不変のものとなったのである」
要するに、神は人間に「表情で感情を伝える力」を与え、それをデュシェンヌが電気ショックを使って解読したというわけだ。

(画像=G.-B. デュシェンヌ・ド・ブローニュ、『人間生理学』より総観図版 4。1862 年。顔の左右で異なる表情の患者が描かれている。 Public Domain, Link,『TOCANA』より 引用)