しかし、「厳密に制御された実験環境」で相手の無知を推し量り、それに応じてコミュニケーションを変化させられるかどうかは、依然として明確な証拠が乏しいと考えられてきました。
そこで今回、ジョンズ・ホプキンス大学の研究者たちは、「ボノボが相手(人間の協力者)の知識の有無を判別し、必要に応じて情報を伝えることで問題解決を助けられるか」を検証しました。
調査では、ボノボたちの目の前でテーブルの上に3つのカップを逆さに置き、そのうち1つにブドウやピーナッツなどの「ご褒美」を隠しました。
次に研究者がおやつを探そうとしますが、その研究者があらかじめおやつの場所を知っている場合と知らない場合の2パターンが用意されました。
具体的には、研究者が透明なガラス越しに様子を見られる条件と、不透明なガラス越しで見えない条件を設定したのです。
その際、ボノボが「人間がおやつの在りかを知らない」と判断したときに、指差しやタップで場所を教えるかどうかを調べました。
(※なお実験の前には、何度か練習を行い「カップを当てるとボノボがおやつを食べられる」という協力関係を理解させています。)
もしボノボが「相手の無知」を理解していれば、無知な相手に対してこそ積極的におやつの場所を教えるはずです。
実際、ボノボたちは人間がおやつの場所を知らない場合、指差しで教える頻度が大幅に高まることがわかりました。
一方で、人間がおやつの場所をすでに知っている場合は、指差ししてくれる割合オッズ比で0.29まで低下したのです。
さらに指差しの速度も、相手が無知であるときのほうが平均で1.5秒ほど速いことが確認されました。
また、おやつの入ったカップを示す正確性も非常に高い水準でした。
人間であれば、わざと教えずに相手が困る様子を面白がったり、間違ったカップを指してイタズラすることもあります。
しかし、ボノボたちは無知な相手に対しては、素直に場所を教えていたのです。
相手の「無知」を見抜くように進化したのはいつか?
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