もし人通りの少ない田んぼ道に人が倒れていたらどうしますか?

もちろん、その人を助けますよね。

では、人混みの多いスクランブル交差点で人が倒れていたらどうします?

ちょっと人助けを躊躇したり、「誰かが助けてあげるかも」と思って素通りしたりしませんか。

このように周りにいる人が多ければ多いほど、人助けがしづらくなる心理現象を「傍観者効果(bystander effect)」と呼びます。

思い当たる節がある人も多いと思いますが、なぜ傍観者効果は起きてしまうのでしょうか?

目次

  • 「傍観者効果」が知られるきっかけとなった事件
  • なぜ傍観者が多いと行動できなくなるのか?

「傍観者効果」が知られるきっかけとなった事件

傍観者効果が社会的に認知され始めたのは、1964年に米ニューヨーク市で発生した「キティ・ジェノヴィーズ事件」がきっかけです。

この事件では、キティ・ジェノヴィーズ(1935〜1964)という女性が深夜に自宅のアパート前で暴漢に襲われ、彼女の悲鳴により近隣にいた38名の住民がそれに気づき、目撃しました。

ところが奇妙なことに、その誰一人として警察に通報したり、キティを助けようとしなかったのです。

結局、暴漢は彼女を傷害・強姦したのちに逃走し、キティは死亡してしまいました。

このニュースは当時、都会人の冷たさを大々的に報じたものとして話題になっています。

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Credit: canva

その後の1968年、アメリカの社会心理学者であるビブ・ラタネとジョン・ダーリーがこの事件に興味を持ち、多くの人が事件を目撃したにも関わらず助けようとしなかった原因を探ろうと実験を行いました。

ここでは学生を対象に「2名・3名・6名」の3つのグループを作り、それぞれを個室に入れてグループでの議論を行わせます。

その最中に1人が発作を起こして倒れる演技をしました。

その結果、2名のグループでは全員がパートナーを助けたのに対し、6名のグループで助けようと行動したのは38%と減少していたのです。