実際、イラン側はイスラエル空軍が米軍の支援を受けてテヘラン近郊の核関連施設を空爆するのではないかと深刻に悩んでいる。例えば、スカイ・ニュースとのインタビューに答えたイランのアラグチ外相は先月28日、「米国とイスラエルがイランの核施設を攻撃することは狂気の沙汰だ。我々は、我々の核施設へのいかなる攻撃に対しても、即時かつ断固とした対応を行うことを明確にしてきた。彼らがそんな狂ったことをするとは思わないが、行えば地域全体がひどい災害を受けるだろう」と述べている。
一方、トランプ政権との交渉について、同外相は「トランプ氏は就任1期目で、制裁解除と引き換えにウラン濃縮を制限するイランの核兵器開発疑惑を巡る国際交渉による合意を反故にした」と批判する一方、トランプ氏がイランとの新たな合意が「素晴らしい」と述べ、外交的解決を望むことを示唆したことに言及し、「状況は前回とは異なり、はるかに困難になっている。私たちの信頼を買うために、相手側がやるべきことはたくさんあるはず…私たちは『素晴らしい』という言葉以外何も聞いていない」と語っている。
ところで、イランが軍事支援してきたパレスチナ自治区ガザを拠点としてきたイスラム過激テロ組織「ハマス」やレバノンの「ヒズボラ」はいずれも指導者がイスラエル軍に暗殺されるなど守勢を強いられている。一方、イランがロシアと共に支援してきたシリアのアサド政権は昨年、崩壊するなど、イランの同盟勢力は急速に弱体化した。アラグチ外相はスカイ・ニュースとのインタビューで、「ハマスとヒズボラはダメージを受けたことは事実だが、同時に彼らは再建しつつある」と説明している。
イランの対イスラエル網は綻ぶ一方、イスラエルを支援するトランプ政権の発足で、イランを取り巻く政治、軍事情勢は楽観視できない。一方、イランの国民経済は国際社会の制裁もあって深刻だ。インフレ率は50%を超え、青年たちの失業率はほぼ20%と高い。