モミカさんの殺害はどのような理由があったとしても許されない犯罪行為だ。ただし、その犯罪行為を誘発したコーラン焼却行為もやはり許されない行為だということだ。すなわち、モミカさん殺害事件から教訓をくみ取るべきではないか。

それは、コーランや聖書などの宗教聖典を冒涜する行為は犯罪だという教訓だ。自分が信じない宗派の聖典も信じている信者にとっては貴重で、尊い書物だとうことだ。換言すれば、他者の信仰心を不必要に侮辱したり、中傷する行為は許されないのだ。

モミカのコーラン焼却行為は世界のイスラム教国に大きな抗議を呼び起こし、イラク、アラブ首長国連邦、モロッコは、スウェーデン駐在大使を自国に呼び戻した。それに対し、スウェーデン政府は抗議デモを「イスラム嫌悪的な行為」と非難したが、同時に、「わが国には集会の自由、言論の自由が憲法で保護されている」と説明している。

スウェ―デン政府は頻繁に発生するコーラン焼却行為を禁止したが、その直後、ストックホルムの裁判所は「根拠は不十分だ」として禁止を取り消した経緯がある。曰く、「抗議とデモの自由は憲法で保護されている権利だ。一般的な脅威状況だけでは介入の根拠にはならない」と説明し、「言論の自由」は宗教団体の聖典を燃やす行為を容認しているという解釈だ。

スウェーデンの「言論の自由」を聞いていると、フランスのマクロン大統領が2020年9月、「フランス国民は冒涜する権利を有している」と表明して、トルコなどイスラム教国から激しいブーイングが飛び出したことを思い出す。

フランスでは2015年1月7日、パリの左派系風刺週刊紙「シャルリー・エブド」本社に武装した2人組の覆面男が侵入し、自動小銃を乱射し、建物2階で編集会議を開いていた編集長を含む10人のジャーナリスト、2人の警察官を殺害するというテロ事件が発生した。それ以来、フランスではイスラム過激派によるテロ事件が多発している。マクロン大統領は2020年10月24日、パリの風刺週刊誌「シャルリー・エブド」がイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載したことに対し「わが国には冒涜する自由がある」と弁明したのだ。