1836年にシャンパーニュ地方の首都ランスに誕生した、「シャンパーニュ・ポメリー」。
1874年に、当時の当主ルイーズ・ポメリーが、世界初の辛口(ブリュット)シャンパーニュを創造。それまでは甘口が主流だったシャンパーニュを、現在の主流である辛口へと導いた革新的な人物だ。
アート愛好家でコレクターでもあったポメリー夫人。現在、オルセー美術館の至宝の一つである、ジャン=フランソワ・ミレーの傑作”落穂拾い”も、ポメリー夫人が所有していた。アール・ヌーヴォーの第一人者エミール・ガレなど当時の気鋭のアーティストたちとも多く親交を結んでおり、アートに造詣が深かった。
「エクスペリエンス・ポメリー」は、メゾンがアートと紡いできた歴史にちなんで誕生した展覧会。2003年からほぼ毎年開催されており、世界中の現代アーティストたちを招聘し、彼らの作品を地下カーヴや館の庭にインスタレーションする、ユニークなアートイベントだ。初回には、今や現代アートの巨匠となっている、ウーゴ・ロンディノーネやブルース・ナウマンも登場した。この1月から、18回目となる「エクスペリエンス・ポメリー」が開催中だ。
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Encoreunestp の作品。カーヴに吊るされた、何百もの蝶々。熟成中のワインを眺めながら、蝶々の洞窟を歩くイメージ。©Mathilde Giron
世界中から40人ほどのアーティストを招聘。今回のテーマは、”地下のメロディー(Mélodies en sous-sol)”。地下30mに位置するカーヴは、全長18kmにも及び、年間を通して気温10度、湿度98%で、熟成に最適な環境になっている。
シャンパーニュの瓶が熟成を続けているこの地下カーヴの空間や壁を舞台に、参加アーティストたちの多面性や多様性、ポエジーとユーモア、時を超えた夢のような幻想性などを感じる様々な作品が展示されている。
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Nam Tchun-Mo の作品。地上まで切り開かれた石切場を利用したダイナミックなオブジェ。壁に投影する影も美しい。©Mathilde Giron