命を守る特殊スーツの秘密
この種の挑戦を過去に試みた4人のうち、生還できたのはわずか2人という厳しい現実があった。そのため、バウムガルトナーの命を守る気圧服の開発は、プロジェクトの最重要課題の一つとなった。
スーツの構造は4層になっており、最外層は耐火素材ノーメックス(Nomex)で作られ、内部にはゴアテックス(Gore-Tex)を含む特殊な構造が採用されていた。ゴアテックスは体内の湿気を外に排出しながらも、スーツ内の気圧を維持する役割を担っていた。
このスーツがあったからこそ、バウムガートナーは成層圏の極寒の環境、低酸素、そして音速突破時の衝撃から身を守ることができたのである。
通常の宇宙服と比べて柔軟性を高めた設計だが、それでも着用者の動きは大きく制限された。バウムガルトナー自身、「枕を通して呼吸するようだ」と表現している。訓練段階では、スーツの制約によってパラシュートのコードを誤って切断してしまう危険性が発見され、設計変更を余儀なくされた。