イップスはプロのスポーツ選手でも報告される繊細な動作がプレイ中にできなくなるという問題で、野球選手の投球や、ゴルフ選手のパットが上手くできなくなるなどが有名です。
しかしミュージシャンズジストニアは、イップスは類似点があるものの厳密には異なる症状だと考えられています。
イップスは「音楽家のジストニアと同様に、局所性ジストニアの一種」と捉える見方も存在していますが、基本的には「不安などの精神的要因が大きく関わる」とする見方が主流です。
イップスはメンタルの影響が強い現象であり、ミュージシャンズジストニアは脳の運動制御ネットワークの誤作動という神経系の問題なのです。
もちろんイップスと同様、精神的ストレスも発症や悪化を招く要因となり得ますが、「身体的酷使による局所性運動障害」という色合いがより強い点が特徴といえます。
そしてこの症状は、プロミュージシャンだけでなく、アマチュアや趣味で演奏を続ける方にも起こる可能性があります。
「ある曲だけ指がうまく動かない」、「速いテンポになると手が固まる」など、最初はささいな違和感から始まり、気づくと演奏自体が困難になるケースもあります。
ではこうした問題は、具体的に何を原因にして発生するのでしょうか?
練習のしすぎに注意!?ミュージシャンズジストニアが起きる原因
ミュージシャンズジストニアの原因については、練習のしすぎによる脳の過剰適応だと考えられています。
たとえば、長時間の演奏を続けると、指や手の運動回路が過度に発達しすぎてしまい、正常な指令と実際の筋肉の動きにずれが出始めます。
結果として、意図しない硬直や暴走が起こるというのが主なメカニズムです。
特に10年を超える演奏経験や、1万時間以上の猛練習が原因になることが多いと報告されています。
練習はやればやるほど良いと考えている人は多いかもしれません。特に楽器の演奏だと、プロを目指す人なら「1日10時間以上絶対練習する!」などの目標を心に決めて取り組んでいる人もいるでしょう。