s1-11-1-4.pdf (cao.go.jp)

イギリス、フランスなどの西欧諸国の経済力の源泉は、植民地経営だ。大航海時代を切り開いた技術革新による植民地経営を前提にした産業革命の成果をへて、政治力・軍事力が先行するようになり、それにともなって経済力が付与された。ドイツやアメリカは、イギリスを起点として開始された産業革命の波に乗ることによって、やはり技術的優位を確立し、それを軍事力の増強につなげたことを、経済力の増進につなげた。

普通に考えれば、中国やインドに対抗できるはずがない欧州諸国が、産業革命の成果を軍事力の増強につなげ、それを最終的に経済力の増強につなげることによって、経済力でも両国を凌駕することができた。その19世紀から20世紀にかけての事情は、長い人類史から見れば、極めて特異な環境要因が存在した特殊なものだった。

インド・モディ首相と中国・習近平国家主席 Wikipediaより

20世紀後半以降の国際社会は、民族自決の原則を確立して植民地主義を否定し、武力行使の禁止を一般原則にして武力による他国の威嚇も否定し、主権平等の原則を絶対化して諸国の独立を保障した。そのような国際社会では、19世紀に産業革命の恩恵を真っ先に享受して、軍事力の拡充に努め、それによって経済力の増強にも努めた欧米諸国の相対的優位は、失われる。

その欧米諸国の相対優位の条件の喪失によって、19世紀初頭まで世界有数の超大国であった中国やインドが、再び超大国化していくのは、むしろ自然な流れだったとも言える。

長い人類史の視点から見れば、中国やインドが超大国に戻り、欧州諸国が衰退していくのは、単に異常な短い時期を脱し、むしろ常態に戻るだけの現象である。

アメリカ合衆国は、19世紀になるまで、基本的に存在していなかった国である。この国の趨勢については、長期的な人類史の観点からは、推し量れないものがある。とはいえ、欧州文明の後継者としてのアメリカの比較優位性は、21世紀には失われていくことになるだろう。

果たしていつまで極東の島国・日本の住民は、「欧米以外の世界のほとんどの国はグローバル・サウスとして括って十把一絡げに理解しておけばそれで足りる新興国である」、という横柄な態度を維持できるだろうか。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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