これを一般の方に提示すれば「えー!」と驚くより「ありえない」という反応が出ると思います。絵に描いた餅そのものです。そもそもNISAで資産形成せよというのは株をやれ、という話だと思いますが、日本人はセロトニンが少なくリスクマネーにお金を投じるのは極めて苦手。その上、日本の経済成長率が低位横ばいであるのに株価全体がグイグイ上がるわけがなく、個別銘柄選び次第で損にも得にもなるのです。

ではお前ならどうするのか、と言われたらまず、月27万円必要だという前提を崩すしかないと思います。内訳をみると光熱、医療、衣服、住居、娯楽費などは小さく妥当なのですが、改革できるのが食費67000円とその他50000円なのです。食費67000円は一日で2233円です。自宅で作る場合「どれだけ食べるんかい?」という話なのです。主婦の手堅い財布感覚、一定年齢になり食が細くなることを考えるとお金がふんだんにあるならともかく、ない人は無い人なりの生活があるだろうと思うのです。

次にその他50000円でこれには交際費が22000円含まれています。退職して10年ぐらいは元気なのですが、75歳ぐらいになると人付き合いはぐっと減ります。85歳を超えたら仲間はだいぶ「刃こぼれ」(=刃が毀れ⇒仲間が亡くなっていなくなること)しています。つまり年金や貯蓄の前提条件を満たす優秀で堅実な家庭であると同時に生活水準もしっかりしたレベルが30年続くという前提です。事業計画をエクセルシートで作った時、前提条件次第でどんな将来図も描けるのですが、そんなレベルの話だと思います。

私の見方は27万円という支出前提を全ての人に30年間続ける計算式がおかしいと思います。お前は最近、将来インフレになると言ったな、と言われれば年金はインフレスライドするとご返事します。よってここではインフレは加味しません。生活費を絞りに絞って月平均20万円の前提にすると30年で必要なのは7200万円、年金が17万円あればあと月3万円の赤字補填なので貯蓄は1080万円必要ということになります。これでだいぶ景色は変わったと思います。

国民年金の方はちょっと足りないですが、そうならば質素な生活をするしかないし、実際に私の周りではそれが高齢者のごく普通の生活に見えます。つまりメディアが報じる「〇〇円必要」という標準化されたストーリーほど惑わすものは無いということです。多くはFP(フィナンシャルプランナー)がいろいろ述べるわけですが、費消スタイルは100人100様です。統計で言うばらつきが大きいわけでそれをひとくくりにまとめること自体、無理難題、ナンセンスだと思います。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年11月24日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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