では、一時的に地球を周回する小惑星は、どこから来るのでしょうか?

これまで地球近傍小惑星の多くは、火星と木星の間にある小惑星帯から来ると考えられてきました。

しかし、2024 PT5の軌道や物質的特性は、この常識では説明がつきません。

自然の天体であるにもかかわらず、地球に非常に近い軌道を長期間維持しており、外来天体としては異例の特徴を持っていたのです。

そこで今回、カレタ氏ら研究チームは、2024 PT5の正体を明らかにするため、天体の反射スペクトルを調べました。

この手法では、天体の表面がどのような物質で構成されているかを特定できます。

彼らは、アポロ計画やルナ計画で持ち帰られた月の岩石サンプルと2024 PT5のスペクトルを比較しました。

その結果、2024 PT5の表面組成が月面の岩石と驚くほど一致することが判明しました。

この小惑星には、月に見られる「ケイ酸塩の鉱物」が豊富に含まれていることが確認されたのです。

一時期、「ミニムーン」などと呼ばれ、話題になっていた「2024 PT5」は、本当に月の一部だったかもしれないのです。

そしてその可能性は、もう1つの調査によってより真実味を帯びてきました。

2024 PT5は「小惑星帯から来たのでも、人工物でもない」

スペクトル分析に加えて、2024 PT5の軌道特性も重要な手がかりとなりました。

地球を周回する物体は、漂う人工物(例えばロケットの部品。つまり宇宙ゴミ)である場合もあります。

画像
小惑星 2024 PT5の軌道分析により、その正体は人工物でないと判明 / Credit:Theodore Kareta(Lowell Observatory)et al., Astrophysical Journal Letters(2025)

その場合、一般的には太陽放射圧(太陽光が天体に与える微小な圧力)によって軌道が変化するという特徴が見られます。

しかし、研究チームによる2024 PT5の詳細な軌道解析では、2024 PT5にはそのような挙動が観測されませんでした。