両者の対談では、マスク氏は既存の政治体制や規制に対する批判を繰り返した。例えば、テスラの工場建設に関する認可の遅れや、気候政策、エネルギー政策への不満を表明した。極右政党は「現状打破」や「既存のエリートに対する挑戦」を掲げており、マスク氏の自由主義的で規制を嫌う姿勢と一致する部分がある。マスク氏はまた、極右政党が掲げる移民制限や反グリーン政策に共感を示している。
ヴァイデル党首とマスク氏の間には意見の違いもあった。例えば、マスク氏は「太陽光エネルギーのファン」だが、ヴァイデル氏はマスク氏の持論には反論せず、その代わりに原子力発電の可能性を指摘し、原発の閉鎖を批判すると、マスク氏はその批判に理解を示した。また、移民問題では、マスク氏は制御されない移民には反対する一方、規制された移民には肯定的だった。また、両者は欧州連合(EU)のインターネット規制を批判し、ヴァイデル氏はドイツの教育システムに対して否定的な見解を示した。
マスク氏の総選挙への干渉はドイツ国内でも物議を醸している。マスク氏がX上でドイツのシュタインマイヤー大統領を「反民主的な独裁者」と批判し、それに先立ちショルツ首相を「馬鹿者」呼ばわりしたばかりだ。
なお、AfDの25日の選挙集会にはマスク氏の他、オーストリアの極右政党「自由党」党首ヘルベルト・キックル氏もビデオメッセージを送り、「私たちはこの選挙戦で皆さんと共に戦っている。AfDとFPOはパートナーだ。AfDは唯一、国民の声に耳を傾ける政党だ。ヴァイデル党首は闘志にあふれた人物だ」と評し、エールを送っている。
なお、同集会の会場周辺には反AfDグループが集まり、抗議デモをした。警察官とデモ参加者が衝突するシーンもあった。ドイツ通信(DPA)によると、黒い服を着た自転車グループが集会会場に突入しようとしたが、警察隊が阻止したという。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年1月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。