ただし、日本の学校でも徐々に変化が見られるとの報告もあります。それでもなお、日本の教育環境にはさまざまな課題が残されています。親の過保護や教師の指導力不足、さらには教育設備の不十分さが挙げられます。また、社会全体の価値観の変化も影響しており、子どもたちの自主性や競争心が育ちにくい環境になっているように思います。

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――日本の教育現場では、親が学校や教師に対して過剰に干渉する「モンスターペアレンツ」の問題が深刻です。教師が親からの圧力を受け、十分な指導ができない状況が増えていると聞きます。

イギリスの学校では、生徒に問題行動があった場合、まず学校側が問題行動を記録して報告書にし、証拠が溜まったところで保護者を学校に招いて話し合い改善策を提案します。改善が見られなかった場合は再度文書で警告があり、さらなる改善が必要な場合は、保護者が子どもを専門家に見せて診断を受けます。そして診断に沿ってカウンセリングや訓練を受ける仕組みが導入されています。専門家による診断や介入、訓練は無料の場合もありますが、保護者が自費で負担しなければならない場合も多いです。費用は大変高く30分で1万円程以上かかります。生徒の行動や精神的問題の有無、障害の有無を現場の先生が評価するのではなく、かなり早い段階で外部の専門機関に委託し、結果が学校に報告される形となっています。

このような外部専門家が早期段階から介入する仕組みは、客観的中たちで生徒の行動を評価することで保護者に適切な介入を示唆し、さらにすべてのやり取りを文書化し、可視化することで訴訟や損害賠償問題を回避し、現場の教員や学校側を保護するために必要だと思いますが、日本ではまだ十分に整備されていない印象を受けます。

イギリスでは訴訟社会のため、こうした仕組みが比較的整っていて、学校が親とのトラブルを避けるための体制がしっかりしています。日本でもこうしたシステムを導入することで、教師が安心して指導に専念できる環境を整備すべきではないでしょうか。