あわせてプーチン大統領は、アメリカによる追加制裁の可能性について、「彼(トランプ大統領)は賢く現実的な人物だ。アメリカ経済に損害を与えるような決定を下すとは考えられない」と、興味深い態度も示した。
トランプ大統領の最大の特徴は、比類なき「交渉」好き、あるいは「取引(Deal)」好きであることだ。トランプ大統領の強気の発言等も、全てその観点から理解しなければならない。
もっとも移民問題などは、交渉相手がいない議題だ。こうした交渉が成立しない領域では、トランプ大統領の言葉は、そのまま受け止めなければならない。
しかしトランプ大統領が、自ら「交渉」相手と指名した相手に対して意図的に投げかけている言葉であれば、全て「交渉」の材料あるいは準備として、受け止めなければならない。プーチン大統領は、そのようにトランプ大統領の言葉を受け止め、冷静かつ的確に、お世辞まがいの事を言ったり、やり過ごしたりしている。
プーチン大統領は、「自分が大統領だったら戦争は起こらなかった」という言葉をロシア側から支持してみせたうえで、「全ての責任をバイデン大統領に押し付けて、トランプ大統領とともに事態の収拾にあたりたい」、というシグナルを、トランプ大統領に送っている。
同時に、プーチン大統領は、トランプ大統領の「ロシアが交渉に応じない場合には追加制裁として高関税を導入する」という言葉を、「交渉」を開始するための材料の提示の言葉、としてしか受け止めていない。そこで情緒的に反応することなく、落ち着いて、「当方は交渉する準備はあるので、貴殿がそのような威嚇を本当に現実化させる心配をする必要はない」、というシグナルをトランプ大統領に送り返している。
就任初日に大量の大統領に署名をしたトランプ大統領だが、それまで頻繁に語っていた関税率の一方的な引き上げ、といった外交政策を、本当に導入しようとはしていない。トランプ大統領は、「交渉」あるいは「取引」の外交の話であれば、どんなに強硬な言葉を発しても、交渉をする前に、それらを全て実施することはない。