■メアリーの部屋

(画像=イメージ画像 Created with DALL·E,『TOCANA』より 引用)
アメリカの哲学者フランク・ジャクソンは、1982年の論文で「メアリーの部屋」と呼ばれる思考実験を提示した。
「メアリーは白黒の部屋で、白黒の本を読み、白黒のスクリーンであらゆる生物学・物理学の知識を身につけていた。だが、ある日、スクリーンに青色が表示された。メアリーは初めて、白黒以外の色を見たのだ」
問い:この時、メアリーは新しい知識を学んだだろうか?
答えがYESだとすれば、主観的な経験であるクオリア(感覚質)の存在を認めることを意味する。というのも、彼女は全ての科学的な客観的知識を色を見る前に学んでいたからだ。
この思考実験は知識と心理状態について問題を提起している。なぜなら、もし彼女が色を見ることで新たな知識を得たとすれば、そういった心理状態を物理学的な事実では記述することができない、ということになるからだ。
答えがNOだとすれば、物理学的な事実は経験と一致することになる。たとえば、水泳をすることや自転車をこぐことは、身体の構造や働き、流体力学などの物理学的知識を身につければ、実際に泳いだり自転車をこぐことと全く同じ、ということになる。
ジャクソンは後に、この思考実験だけからクオリアの存在を導出することはできないと主張するようになるが、現在も哲学界では広く議論されている思考実験の1つである。