この事例で言えば横領するような手癖の悪い人間は簡単には治療が難しく、初犯の時点で再発の芽を摘んでおくべきなのは明らかだった。しかし、感情がその判断を鈍らせてしまったのだ。

仕事で感情が消えていく

ここからは筆者の仮説だが、オーナー経営者という立場は仕事に全人生をコミットするような立場であり、彼らが命をかけて仕事を頑張る中で徐々に感情が消えていくのだと考える。

理由は感情を持ち込むと、取り返しのつかない大きな失敗につながることを体感的に知っているからだ。

例えば、部下が転職する際、最初は感情的に動揺してしまうかもしれない。しかし、経験を重ねるうちに「部下の選択は自分の管理外の問題(課題)」だと割り切れるようになる。これは「自分の課題」と「相手の課題」を切り分ける考え方によるものだ。

こうした意思決定や経験を繰り返していくと、最初は感情が大きく動くような体験にも徐々に慣れてきて、感情を抜いた最も合理的でスムーズな手続きを取るようになる。

淡白に処理する様子をはたから見ることで「冷酷」や「無感情」に映るかもしれない。

自分はサイコパスのつもりはないのだが、独立初期の頃は何でもこわごわ、大騒ぎしながらやっていたことでも徐々に肩の力が抜け、感情を抜いて冷静に対処できるようになってきたように思う。もしかしたら、その様子こそが「経営者になるとサイコパスになる」と感じる理由なのかもしれない。

 

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