そのため、彼の心理実験は主に、被験者に何らかの刺激を与えたときにどんな行動や反応を示すかという科学的な手法でありました。
その中でジョンが1920年に行った悪名高い心理実験の一つが「リトル・アルバート実験」です。
これは何も知らない赤ちゃんを対象に、恐怖反応が条件付けによって学習されうるかどうかを検証するものでした。
条件付けとは「パブロフの犬」で広く知られる実験であり、旧ソ連の生理学者イワン・パブロフ(1849〜1936)によって発見されたものです。
パブロフの行った実験ではまず、犬にベルの音を聞かせます。
その後、犬に餌を与えますが、このときに犬は餌に反応してよだれを垂らします。
パブロフはこの「ベルを鳴らしてから餌を与える」という一連の流れを何度も繰り返しました。
その結果、犬はベルの音を聞いただけで、餌が与えられなくても、よだれを垂らすようになったのです。
これは犬が「ベルの音が鳴った」=「餌がもらえる」というパターンを学習したことによります。
ジョンはパブロフの条件付け実験をもとに、その中身を変えて、赤ちゃんに恐怖を移植できるかどうか試したのです。
では、その禁断の実験の中身を見てみましょう。
非人道的な「リトル・アルバート実験」の映像
ジョンは彼の助手を務めていたロザリー・レイナー(1898〜1935)という女性研究者と一緒に、リトル・アルバート実験を行いました。
被験者に選ばれたのは「アルバート・B(Albert・B)」と呼ばれていた生後9カ月の男児です。
日本語で紹介されるときは「アルバート坊や」と呼ばれているので、ここでもその呼び方に則ります。
アルバート坊やが被験者に選ばれたのは、候補者となった赤ちゃんの中で最も情緒が安定していたからでした。