実際、筆者は以前まで人に任せていた一部の業務を、丸ごとAIで代替できるようになった。会計ソフトを新しいものに替えると、ほぼ全自動で正しく仕訳をしてくれる。

こうしたテクノロジーの進化により、これまで人件費に使っていたコストが丸ごと利益になるのはありがたいことだ。しかし、同時に恐ろしいことが起きていると感じる。

今後、日本企業が全体的に本気でAIを駆使しだしたら、働いていた人たちは丸ごとお役御免になることを意味するからだ。

今後の「事務職キャリア」は非常に厳しい

以上の状況を踏まえると事務職でキャリアを作っていく道は、かなり厳しいと言わざるを得ない。

仮にいい会社で事務職を見つけたとしても、一度失業してしまえば、極度の人余りで転職先探しも難航することは確実だ。条件の良い会社によっては10倍以上の倍率で、しかもライバルはデスクワークを求める若手と限られた椅子を争うことになるためだ。

さらに労働条件も決していいものではない。昨今、現場労働者の人手不足がさらに深刻化すれば、賃上げせざるを得ない。そうなると人余り状態の事務職は相対的に薄給のまま、という構図ができる。

企業からすると事務職は募集すれば代わりがいくらでも応募してきて、さらに派遣社員やクラウドソーシングでも代用が可能、今後はAIの進化で出番は更に減る。こうしたマクロ環境により、事務職の待遇を良くするインセンティブがまったく働かない。

思考の転換が必要な時

ここまでの内容を読むと、あたかも悲観論であるように感じられたかもしれない。しかし、言いたいことはそうではない。「時代は変わった。変化に応じて感覚の転換が必要な時がやってきた」といいたいのである。

かつて、19世紀のイギリスでは産業革命によって手工業者が機械化することに反発し、工場を襲撃する「ラッダイト運動」が起こった。しかし、今は誰もが機械化された工場製品で便利な生活を送っている。