彼が焦点を当てたのは、世界史上で最も有名な人物といって過言でない「イエス・キリスト」です。
3人の「自称キリスト」の初対面
そこでロキーチは同じ方法を用いて妄想型統合失調症患者を治療できるかどうかを検証すべく、3人の「自称キリスト」を集めました。
当時ロキーチがいたミシガン州には「我こそキリスト」を名乗る妄想患者が10人ほどいたため、自称キリストを集めるのはさほど難しくありませんでした。
そして1959年7月1日、ロキーチの勤めていた同州のイプシランティ州立病院に3人の”キリスト”が呼ばれます。
1人目は大学を中退した後、統合失調症を患っていた38歳の男性、レオン・ゲイバー。
2人目は20年前まで作家をしていたが、統合失調症を発症して施設に収容されていた58歳の男性、ジョセフ・カッセル。
3人目は認知症を患っており、農業を営んでいた70歳の老人クライド・ベンソンです。
彼らはともに「我こそはイエス・キリストである」と信じて疑っていませんでした。
そしてロキーチは3人を対面させ、同じ病室に寝泊まりさせて、2年間を一緒に過ごさせたのです。
さて、3人はお互いをどう見たのでしょうか?
キリスト同士の殴り合いが勃発!
ロキーチはレオン(38)、ジョセフ(58)、クライド(70)の3人を引き合わせて、各々がイエス・キリストであると紹介しました。
すると案の定、自分こそキリストだと信じ込んでいる3人は互いに相手を嘘つき呼ばわりし、その場が混乱し始めます。
最初に口火を切ったのは元作家のジョセフであり、「私がキリストであり、この人たちは嘘をついている!」と主張しました。
それに対し、レオンは「違うだろ、あんたは偽物だ!」と罵ったり、クライド老人は「ワシが神であり、イエス・キリストであり、聖なる御霊である」と繰り返し続けたのです。