ケーススタディとしてわかりやすいのが同じ移民国家のカナダですが、学問や資格においてカナダ人と比べ、概ね移民の方が優れた成果を残しています。背景としてはカナダの移民はカテゴリー的に経済移民が多く、その子供たちも高い教育レベルを受けているケースが多いことがありそうです。更に 移民故にそのハンディキャップを乗り越えるため、ローカルの人の2倍も3倍も努力しないと躍進できないことがわかっているのです。

私も移民のステータスですが、カナダでは比較的印象が良い日本人でもカナダ人中心の社会には入りにくいのです。そのために自分の目標を絞り込むしかなく、私の場合は仕事で上位を目指したわけです。他の移民の方もものすごく努力してよじ登っています。大企業は採用者数も多く、コーポレートガバナンスという姿勢もしっかりしてるので公平な目線で能力主義的な採用や人事をしますが、小規模企業では今でも生粋のカナダ人とそうではない人のバランスを考える経営者が多いのもこれまた事実です。

アメリカの人口に対する移民比率はおおよそ15%、カナダは25%であるため、移民の処遇待遇はカナダの方がはるかに進んでいます。アメリカの移民に対する姿勢がカナダのそれの水準に近づくにはまだ20-30年かかるのでしょう。これが私が見るアメリカ製造業のボトルネックではないかと思います。

トランプ氏が本気でアメリカを復活させたいなら正規移民に高い教育を維持し、より公平さを出すようにしないと真の意味での製造業復活はたやすくありません。

トランプ氏の他国への関税賦課の脅しは、国内産業をより活性化するための方策の一つだと考えていますが、自国の弱点を関税措置により保護するのは一時的な措置だとしてもあまりクレバーなやり方にはならないと思います。理由は国内産業に国際競争力が欠如し、最終的には諸外国に勝てないからです。よって正論すぎるかもしれませんが、トランプ氏の国内製造業の復活、強化を図るならどう国内産業に力をつけ、輸出競争力をつけるのか、再検討すべきでしょう。氏は不動産事業家なので製造業の厳しさはなかなか理解できないのかもしれません。