「翌日、同期と会ったときも、やはり僕の心には『おもんない』という悪口が浮かんできました。しかし、次の瞬間、オカンの言葉を思い出し、『ありがとう』と心の中でつぶやいてみたのです。すると、不思議なことに、それまで心に感じていた重たいモヤモヤが、少しずつ消えていくのがわかりました」(著者)

「悪口を言いたい気持ちも徐々に薄れていき、なんとなく気分が軽くなっていったのです。『ほんまに効くんか?』と驚きつつも、その後も試してみました。しかしその後も、悪口が頭をよぎるたびに『ありがとう』と心の中でつぶやくと、まるで悪口モンスターが小さくなっていくかのような感覚が広がったのです」(同)

「悪口」の表裏を理解する

人の悪口を言わない人は存在しません。「悪口」という行為に対して「それは心が醜いから」「それはいけない事だから」と説いても矛盾が残ってしまうでしょう。

矛盾ならず、人の悪口を言うことは誰にでもあることですから、心のありかたを説いても意味がないのです。悪口は、誰だって言いたくなるんだけど、できるだけ言わないように気をつけていると解釈したほうが理解はされやすくなります。

では、「悪口を言う人」とはどんな人でしょうか? 多くの人は「自分勝手な人」「コミュニケーション力が低い人」といった答えがかえってくると思います。ただしこれは正解ではありません。悪口の影響を理解しなければいけないからです。

悪口を言ったために人間関係が壊れてしまうことはよくあることです。そして、いったん壊れた人間関係は、なかなか元には戻りません。悪口の「言った」「言われた」は表裏の関係にあります。だから、口にしないことで自らを助けるのだと理解しなければいけません。汚れた心は自らに降りかかるのです。これは仏教の説法でも解かれています。

なお、本書のケースにリアリティがあることから多くの人におススメできます。上司のコネタとしても役立ちそうです。物事の正しい道筋を見つけられるかも知れません。