この記事ではまず、今回コラボする「負の温度」と「量子状態のごった煮(幾何学的フラストレーション)」の両方を分かりやすく解説し、そのうえで研究結果をご紹介します。
(※負の温度や幾何学的フラストレーションをご存じの方は、前半部分を読み飛ばしていただいて構いません)
量子のごった煮の中では何が起こり、負の温度へ移行したときにどんな変化が見られたのでしょうか?
研究内容の詳細は『アメリカ物理学会 原子・分子・光物理学部門の年次総会』で発表されました。
目次
- 「負の温度」はこの世の何よりも熱い
- 「奇妙な量子状態」×「奇妙な温度状態」で何が起こるか?
「負の温度」はこの世の何よりも熱い
この世でもっとも冷たい温度として知られているのが、絶対零度(0K=-273.15℃)です。
古典物理によれば、物体の温度は内部の粒子の運動エネルギーによって決まり、0Kの物体は粒子がまったく動かず、エネルギーレベルがすべてゼロにそろった状態と解釈されます。
しかし、そこから少し温度を上げると、粒子のエネルギーは多様化していきます。
たとえば100℃の液体内では、“すべてが100℃相当のエネルギーを持つ”わけではなく、少数の高エネルギー粒子と多数の低エネルギー粒子に分かれているのです。
たとえば100℃の液体の内部にある粒子のエネルギー状態を調べ上げると、全てが100℃に匹敵するエネルギーを平均して持っているわけではなく、一部の高エネルギー粒子とその他多くの低エネルギー粒子によって構成されていることがわかります。
温度計が100℃を示すのは、高エネルギー粒子と低エネルギー粒子がランダムに衝突し、その結果として「平均的に100℃程度」と判断されているにすぎません。
実際には1億℃や1兆℃でも、粒子すべてが高エネルギーなわけではなく、依然として低エネルギー側に集中するという分布パターンが続きます。