「露朝軍事同盟」では3条、4条に「両国関係が軍事同盟である」と明記されている。例えば、第3条「締約国は、地域および国際の平和と安全を確保するために協力する。いずれかの締約国に対する武力侵略行為の直接的な脅威が生じた場合、締約国は、いずれかの締約国の要請により、立場を調整し、脅威の排除に向けた協力のための具体的な措置について合意するため、遅滞なく二国間交渉のチャンネルを活性化する」、第4条では「いずれかの締約国が一国または複数の国から武力侵攻を受け、戦争状態に置かれた場合、他方の締約国は、国際連合憲章第51条および朝鮮民主主義人民共和国およびロシア連邦の法律に従い、遅滞なくあらゆる手段で軍事的およびその他の支援を提供する」と記述されている。一方、前者には「軍事同盟」といった表現が見当たらない。タス通信によると、イラン側は今回の条約について「露朝間の条約とは異なり、相互防衛条項は含まれない」と説明したという。
北朝鮮は条約に基づき、ウクライナと戦争するロシアを支援するために軍事器材などを援助するだけではなく、1万人を超える兵力を派遣している。一方、イランとロシアとの間は軍事的協力ではもっと長い歴史がある。シリアの内戦ではアサド政権を支援するためにイランが2011年にシリア内戦に介入、ロシアは2015年にシリア内戦に参戦している。すなわち、ロシアとイランはシリア内戦を通じて既に軍事的に連携を深めてきているのだ。
そのような意味合いもあって、ロシアとイラン間の「包括的戦略パートナーシップ条約」には軍事同盟といった内容は希薄となったというか、必要がなかったのではないか。対ロシアとの軍事関係ではニューカマーの北朝鮮にとってロシアとの関係が「軍事同盟」という性格を強調する必要性があったともいえる。「ロシアとイラン関係」と「ロシアと北朝鮮関係」はこれまでの人的交流や紛争地での連携などの歴史で明らかに異なるわけだ。対ウクライナ戦争では、イランはロシアに自国製の無人機や弾道ミサイルなどを送っていることはよく知られている。両国間は既に軍事同盟なのだ。