今や地球上の陸地には「人跡未踏の地はない」とも言われるが、実は人類史を通して誰も頂上まで登ったことのない未踏峰の山がいくつか存在し、その中でもとりわけ人智を超えた謎に包まれた山が「カイラス山」である。
■誰も山頂に辿り着いていない謎の聖地「カイラス山」とは
チベット高原の西部にそびえる標高6656m(6666mという説もある)の未踏峰の山が「カイラス山」だ。
チベット仏教、ボン教、ヒンドゥー教、ジャイナ教で聖地とされるカイラス山は、おそらく地球上で最も神秘的な場所の1つであり、今も謎に包まれたままである。
インドの4つの主要な川の水源地でもあるカイラス山だが、標高4650mの地点には2つの湖がある。この2つの湖もまた、謎に包まれた不思議な場所であるという。
その1つ、マーナサローワル湖は「生きている水の湖」と呼ばれ、どんなに荒れた天候でも湖面は静寂を保っているという。この水は何の問題もなく飲むことができて、飲んだ者の中からは癒しと若返りの効果があるという指摘もある。
もう一方のラークシャスタール湖は、常に嵐にさらされているかのように波立っており、その水は塩辛く飲むことができないというのだ。「死んだ湖」または「悪魔の湖」とも呼ばれ、人間はもちろんあらゆる生物にとって危険な場所である。聖地巡礼者の間では、この場所を訪れることは禁止されているという。
この2つの湖が自然に形成されたのか、人工的に作られたものなのかまだわかっていない。
カイラス山の謎はまだ尽きない。噂によると、ここでは時間の振る舞いが異なることあるという。時間が普段通りに流れることもあれば、ゆっくりになることもあるが、ほとんどの場合はスキップするように時間が早く進むという。この現象は人間をはじめ生物種にのみ当てはまり、訪れたある旅行者によれば、12時間の滞在で頭髪が2週間分ほど伸びたという。
誰もがこの山に近づくことができるわけではない。カイラス山を訪れた旅行者の思考は往々にして混乱し、彼は元気に山を登っていると自覚していても、気づくと下山しているのだという。方向感覚が狂ってしまい、山頂を目指して登り続けることができないというのである。