それに対し、トリーア司教区は、2024年7月2日のアーヘン地方裁判所の類似判決を基に時効を主張した。同司教区の広報担当者によると、訴状で提起された主張に対しては「知り得ない」として反論し、告発された神父に対する他の苦情や非難が確認されていない点を強調。また、神父の人事記録にも性的虐待に関する不正行為の証拠は見つからなかったという。

地元の被害者支援団体「Missbit」は地方裁判所の判決をコブレンツ高等裁判所に提訴する意向を示した。問題となっている犯罪行為は50年以上前だが、「カトリック教会の立場、特に聖職者が無限の信頼を享受していたこと、そして隠蔽や妨害行為があったため、成功する訴訟は2010年以降に初めて可能になった」と述べ、被害者の請求権はまだ時効にかかっていないとの見解を示している。

聖職者の性犯罪の犠牲者にとって、裁判で争って賠償金を得るためには、教会側の隠蔽、告解の守備義務(Sealof Confession)、そして時効の壁といったように、多くのハードルがある。もちろん、教会側の事件の全容解明への協力が欠かせられないことは言うまでもない。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年1月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。