また、教会関連機関は2004年以降、性的虐待防止のために総額7億2,799万4,390ドルを費やしており、そのうちの5分の4が過去10年間に支出された。CARAの研究によれば、未成年者への性的虐待に対する取り組みでこれほど高額を費やした非政府組織は他にないという。以上、カトリック通信(KNA)の報道に基づく。

ところで、米教会がどこから性犯罪の犠牲者への賠償金50億ドルを工面したのだろうか。20年間、50億㌦といえば、年間約2億5000万㌦だ。信者の献金には感謝献金やペテロ献金などその目的、対象こそ異なるが神への喜捨だ。その献金で教会側は聖職者の生活活動や関連施設の運営を行ってきた。信者が働いてきた給料の一部を教会側に献金する場合、この献金が神の御心に基づいて使用されることを願うものだ。聖職者が未成年者への性的虐待を犯した時の犠牲者への賠償金に使われるとは考えもしないだろう。事前に分っていたら、多くの平信者は教会に献金することを躊躇するだろう。

米教会の中には、聖職者の性犯罪への賠償金を支払うことが出来ずに破産宣言した教会も出てきている。訴訟大国・米国では未成年者への性犯罪への賠償金も他の国のそれより数段高額だ。教会側は教会所有の不動産を売って資金を集めるケースも出てきているほどだ。

例えば、ドイツ教会の場合だ。ある男性が子供の頃、神父から長年にわたって性的暴行を受けていたとドイツのトリーア司教区を相手取って訴訟を起こした。彼の求めた慰謝料は30万ユーロだ。それに対し、トリーア地方裁判所は犯罪行為が数十年前のものであり、時効が成立しているとして賠償を認めなかった。原告の男性は、トリーア近郊ロンギヒで学校に通っていた子供の頃に、神父から長期間にわたり性的暴行を受けたと主張している。男性(1961年生まれ)は「その体験で深刻なダメージを受けた、その影響は学業や職業訓練における学習障害、結婚生活の破綻、身体的および精神的な深刻な影響、さらには自殺未遂にまで及んだというのだ。