国民年金の財政問題は深刻であり、現行の制度を維持するだけでは限界があるという指摘は多くの専門家からもされています。その中で、河野太郎氏などが提案している「最低保障年金」は、抜本的な年金改革の一案として注目されています。この提案がなぜ合理的と考えられるのか、またその課題について説明します。
最低保障年金とは:
すべての国民に一定の年金額を支給する制度です。保険料の支払いに関係なく、一定の基準に基づいて生活に必要最低限の年金額が保証されます。 財源は税金(主に消費税など)によって賄われるため、現行の保険料方式に依存しません。
最低保障年金の合理性
現行制度では、国民年金の保険料を払えない人や未納者が多く、老後に十分な年金を受け取れないケースがあります。最低保障年金では全員が一律で最低限の年金を受け取れるため、社会的な公平性が高まります。 現行の基礎年金だけでは、低所得者や非正規雇用者が老後の生活に困窮する可能性が高いです。最低保障年金は、最低限の生活を支えることで貧困対策として有効です。 現行の国民年金は少子高齢化により、保険料方式では財政維持が困難になっています。税財源を活用した最低保障年金は、持続可能な財源設計が可能です。
最低保障年金の課題
最低保障年金の導入には大規模な財源が必要です。主に消費税の大幅な増税が議論されるでしょうが、これは国民への負担増を伴います。たとえば月額7万円の最低保障年金を支給する場合、年間の必要財源は30兆円程度になる可能性があります。 この財源の一部は基礎年金保険料の廃止で相殺できますが、現在の10%の消費税では財源が足りません。 現行制度から新制度への移行には大きな混乱が予想されます。特にすでに払った年金保険料を返済するかどうかなど、経過措置の設計が必要です。 労働意欲への影響:一定額が保証されることで、働く意欲を低下させる懸念もあります。この点については、ベーシックインカムの議論と同様の課題です。
最低保障年金は、国民年金の財政破綻を回避し、老後の生活を支えるための抜本的な改革案として合理性の高い提案です。ただし、財源確保や社会的合意の形成、移行期間の設計といった課題を乗り越える必要があります。日本の少子高齢化の進行を考えると、従来の制度に固執せず、最低保障年金のような新しい選択肢を真剣に議論するべき時期に来ています。