しかし、前述のとおり、中国電力は島根原子力再稼動前は他エリアからの融通受電量が多いため、分母に「融通受電電力の日量」を加えて、以下の式で原子力比率を計算してみました。

原子力発電比率 =(原子力発電)/(原子力発電+火力発電+融通受電)×100

他エリアからの融通受電電力のコストは公表されていませんが、その原資のほとんどは他エリアの火力発電であることが予想されるので、自社の火力発電コストと同程度か、もしくは高いくらいでしょう。

島根原子力発電所2号機と3号機が稼働することで、火力発電の燃料費(+他エリアから購入する融通電力の費用)が30%も低減させることができるので、中国電力の電気料金を下げられる可能性が高くなります。早期の運転開始が期待されます。

電力自由化の前は、「原発は電力会社をもうけさせるためにやっている。原発は資産価値が高く、発電の原価が高くなるために、総括原価方式で電気料金を計算すると割高な電気料金が認められるからだ」として、原発と総括原価方式は2大悪党のようにとらえる論調が多く聞かれました。

しかし、電気料金の内訳の多くは燃料費などのランニングコストからなっており、原発は確かにイニシャルコストは高いですが、ランングコストは圧倒的に安く、間違いなく電気料金を低減させる効果があります。建設した原発を発電させないでおくことは、イニシャルコストの安い恩恵をわざわざ放棄していることなのです。

自由競争では電気料金は下がらないことは、自由化後のここ数年の電気料金の推移をみれば明らかです。電気料金を下げるには、競争させる事ではなくて、発電の原価を下げることの方がよほど効果があります。

最後に、「電力会社が利益を上げること自体がけしからん」という論調もありましたが、電力会社が上げた利益はタイムラグはありますが、電気料金の値下げにつながります。総括原価方式は正しく運用すれば、公共インフラサービスの提供料金計算方法では最も合理的、効率的な制度だと思っています。