ネットに「普通の人」はいない

自分はYouTubeに英語学習動画を出している立場で、視聴者から学習相談をよく受ける。自分の提唱する学習法を信じて勉強を頑張る人にはぜひ全員が成功してもらいたいと強く願うが、現実的に全員成功できるわけではなく途中でやめてしまう人もいる。問題はそのやめてしまう理由に「ネットの情報収集をやりすぎたから」というものがあるのだ。

多くの場合、勉強をしているとどうしても自分と周囲との差が気になってしまうものである。そこでネット検索をする。そうすると「この試験は◯週間で誰でも合格できる」といったやたらと最短最速、近道、裏技、魔法といった煽りに溢れかえっている。そういった煽り情報ばかり見てしまうと、「自分は平均的な学習者より遅い」と強烈な置いていかれ感の焦りが生まれ、本来の自分の実力以上の結果を求めて最後に挫折してしまう。

英語の勉強は婚活やビジネスなどと違ってライバルはいないのだから、誰も見ないようにして毎日淡々と力のつく学習を積み重ねるだけでしっかり伸びる。それなのにネットで情報収集をすればするほど、自分自身で自滅の可能性を高めてしまうのだ。

考えてみればネットに「平均的な人、普通の人」は可視化されない。成功者の顔をして何かを売って金銭を得たい人、嘘をついて注目を集めて気持ちよくなりたい人、有益な情報を発信して価値提供をしたい真っ当な人、影響力を得てビジネスに活用したい人、だいたいどれかに当てはまることが多いだろう。

「普通の人」はネットに記事や動画、SNS投稿をしない。日々の仕事や家事育児で忙しくして「見る専」という人が圧倒的大多数だろう。継続的に発信してアクセスを集める、という目的を持って活動している時点でリアルでは極めて少数派であり、「普通の人」ではないのだ。

これは個人的肌感覚の域を出ないが、自分は保護者会などで多くの同年代の人とリアルで顔を合わせる。SNSの利用状況についての話が出てもせいぜいFacebookやインスタで旅行の写真を出している、学校や地域のLineグループとかその程度である。自分のように実際は積極発信しているが隠している人もいるかもしれない。だが全体から見てかなり例外的だろう。

ネットには「普通の人」はほとんどいないのだ。

SNSや動画の世界ではやたらと華々しい人ばかりが目立つ。投資界隈では資産は30億とか50億といった規模を運用していたり、サラリーマンも年収2000万円がゴロゴロ、起業していれば毎年1億円で安定というアカウントも多い。そうしたものばかり見ていると、ドンドン感覚が歪んできてネットに可視化されない圧倒的大多数が見えなくなってしまう。ネットは使いすぎると逆に情弱になるのだ。

 

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