黒坂岳央です。
誰もがネットで情報収集をする時代になった。少し前まで調べ物をしたいと思ったら「まずは書店か図書館へ」だった筆者自身も、とりあえずググる、動画検索、SNS検索となった。同じようにまずスマホで調べるという人は多くなっただろう。
数学の問題や英文法の解説、おすすめの観光地や見どころを調べるということなら、確かにネットで情報収集は便利である。問題はネットの情報を過信して本来は結論が出ていないグラデーションのかかった分野まで「答え」を探してしまうことだ。そうなると調べれば調べるほど、どんどん正しさから遠ざかっていく。そんな人が増えてしまったのが現代社会だ。
医師の問診よりネットの書き込みを信じる患者親族に女医がおり、本人から聞かされた話だが、「ネットの書き込みを見た患者に苦労させられることが増えた」という。どういうことか?
不調を訴えてやってきた患者の問診をして問題ないことを伝えるも、「先生よく見てください。間違いなくこの病気になっているはずです。自分はこの症状が出ています」と言われて差し出されたスマホには匿名掲示板の書き込みや、SNSの投稿が写っているのだという。医師が実際に患者の体を見て判断を出しているのに、どこの誰ともわからない人の書き込みの方を信じてしまう。明らかにネットの情報収集で正しさがわからなくなってしまった事例の一つだ。冷静に考えれば、数多くの患者を診察した経験と高い専門知識がある医師が直接体に触れて見ているのだから、明らかに信頼性は高い。診断結果に疑いが残るなら、別の医師のセカンドオピニオンを求めるのが合理的判断といえる。
おそらく、同じことが弁護士や税理士など高度専門職についても起こっていると考えられる。人によっては生成AIから作成された記事や動画を信じてその「証憑」を持ってくるようになるだろう。