労働者階級の生活水準向上

「先進国革命」が起こらない最大の理由は、「巨大メディア」の問題ではなく、日本をはじめ欧米先進資本主義国では、100年以上前のマルクス、エンゲルス、レーニン、スターリンの時代に比べ労働者階級の生活水準が向上したからである。

確かに、日本では非正規雇用の増加や格差問題、少子高齢化など、解決すべき諸問題は山積しているが、先進各国では失業率は概ね5パーセント以内であり(日本は2パーセント台)、名目賃金も年々上昇している。さらに、「福祉国家」の理念が普及し、先進各国では年金、医療、介護など社会保障制度も整備されている。マイカー、マイホーム、海外旅行へ行く労働者層も少なくない。

このような労働者階級の生活水準の向上は、先進各国の持続可能な経済成長や、先進各国の労働運動、革新政党の活動によるところであるが、生活水準向上は、社会主義革命の条件とされる労働者階級の「階級意識」(ルカーチ著「歴史と階級意識」283頁以下未来社)にも影響し、先進国革命を困難にすると言えよう。

なぜ「先進国革命」は起こらないのか?

上記の通り、労働者階級の生活水準が向上すれば、労働争議も激減し、階級闘争も低調になり、先進国革命は起こらなくなる。これは生活水準向上という「構造的問題」である。フランス、イタリアなどの西欧共産党や日本共産党の党勢衰退も労働者階級の生活水準向上という「構造的問題」である。このことが、日本共産党のみではなく西欧共産党も含め、先進国革命が起こらない最大の理由である。

したがって、もし先進国革命の可能性があるとすれば、先進資本主義諸国の連鎖的経済破綻による労働者階級の生活破綻であろう。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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