パナマ。中米と南米の境目と言ったらよいでしょうか?多くの方はパナマで思い浮かべるのはパナマ運河だと思います。この運河の利用が懸念される事態になっています。

パナマ運河は全長80㌔の大西洋と太平洋をつなぐ交通の要衝ですが、この運河の中ほどは海抜26メートルあるため、水門のような施設「閘門(こうもん)」をいくつか作り、そこに水を入れて水深を作り、船を通過させる方式なのです。その水は「パナマの水がめ」と称されるガトゥン湖から引いているのですが、そのガトゥン湖が渇水の危機となり、昨年から今年初めの乾季に水が十分に引けず、船の運航に重大な支障をきたしたのです。

今年もその可能性はあり、極端な話、水がなければパナマ運河は何の役にも立たない飾り物になるわけです。年々の気候変動を考えるとこの「レバタラ」話の可能性は大いに現実的な危機だと考えています。

では運河が使えないとどうなるのでしょうか?一つは代替輸送として運河に沿って鉄道が敷設されており、大西洋側と太平洋側の間にそれぞれ港があります。そこで荷物を移し替えるという手段があり、ここにきてそれが増えています。ただし、コンテナならできますが、自動車運搬やLNGや石油、資源運搬などは現実的ではなく、その場合は大西洋から地中海を経て反対周りでアジアとの輸送ルートとなり、あまりにも船の輸送に無理かかかります。

パナマの問題はこれだけではありません。運河の通行料が国の重要な収益でそれが無くなれば国家をどう維持するのか重大な局面を迎えます。それに追い打ちをかけたのが世界最大級のコブレ・パナマ銅山の閉山です。環境問題に敏感なグループがこの鉱山の環境問題と相まって鉱山稼働許可を出した政府への抗議行動が暴動化するほどになり、政府は鉱山開発会社に出した20年間の稼働許可を突如取り上げたのです。

この鉱山のパナマ経済に及ぼす効果はGDPの5%もあり、世界の銅の価格が急騰している要因の一つでもあります。パナマ政府にとって莫大な税収が突如なくなっただけでなく、バンクーバーのこの鉱山会社が追った損失の補填問題が国際問題化しつつあります。国際仲裁裁判所に訴えていますが、その金額7兆円とされます。

5月に同国は大統領選があり、どの候補者も経済の回復を訴えていましたが、運河の収入はない、鉱山の収入はない、損失補填の問題はあるとなれば踏んだり蹴ったりそのものなのです。2つの環境問題が引き起こしたパナマの悲劇ともいえるのでしょう。

日本は豪雨や更に暑い夏で土砂崩れや浸水さらには社会インフラのマヒといったリスクを抱えます。地球環境問題に無縁という国は今やほとんどないといってよいのではないでしょうか?

環境問題は人間の力では問題に即して柔軟な対応をしていくということしかできません。日本人は自然災害への備えがありますが、世界では様々なパニックを引き起こす原因となっています。

環境問題が引き起こす社会問題、今後、ますますその度合いは高まりそうです。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年5月22日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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