私のテナントさんには学生さんも多いのですが、私が取っているコミュニケーション手段は実は学生さんの親御さんとの直接のやり取りです。借りる時から親御さんに顔を売り、親からすれば遠くに住む子供に何かあった時に話ができるのは大家さん、という関係を作るのです。実際に数多くの問題をそれで解決しました。時には学生さんが4か月ぐらい賃料滞納した挙句、プイと無断退去した時も親御さんと相談し、1年がかりで全額回収しました。
仲介ビジネスは不動産に限らず、あらゆる分野に存在します。会社の買収でも専門業者が言葉巧みに仲介し高額の手数料を抜き去ります。私も何度か会社買収をやってきていますが、仲介業者を雇ったことはありません。小規模の買収では弁護士すら雇いません。それぐらい全部できる武器と知識(契約書や法的付随書類、手順など)は持ち合わせています。
自分でやると何が良いかと言えば、相手と直接やりとりするので聞いた聞かなかったという話を最小限に食い止められるし、気になることを聞き出せるメリットがあるのです。そして双方ウィンウィンで売買するわけですから、取引後も良好な関係が維持しやすくなります。
人材紹介会社は欧米でも非常に発達したビジネス形態で人材仲介事業ともいえます。働きたい人が登録し、会社とマッチングサービスをするわけです。私はかつてこの仲介サービスで5-6人、採用したことがあるのですが、ほぼ全滅でした。理由は雇われた人から見ると「この人に雇われた」という忠誠心が直接雇用の場合と比べ落ちるのです。
雇われる側からすると諸条件と仕事の内容というファクトシートで就職を決めるのですが、会社には雰囲気、社風、同僚との関係、プレッシャー度などファクトシートに出ない事実も多く隠されており、このマッチングが難しいのです。それ以降、人材紹介会社は一切使いません。自分で人材募集を出して書類選考、面接をやります。「手間だろう」と聞かれたら「大事なスタッフを採用する以上の仕事がありますか?」と答えます。
仲介というのは双方にとって便利なツールです。ですが、私から見ると前近代的なビジネスに見えるのです。これだけ情報化が進み、ITに便利なアプリが出来た今、双方が直接探す「相対市場」はオンライン上でいくらでも生み出せる時代になりました。もちろん、大規模な仲介の場合や企業間取引における『中和剤(=仲介)』を要す」といったリスク回避手段を求めるケースはやむを得ませんが、個人的には仲介ビジネスのあり方は変わっていくのだろうなと思います。駅前のべた張り不動産屋が化石となる時代も遠くない気がします。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年5月24日の記事より転載させていただきました。
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